1ページ百合~不良編~

 

「お、白パン。」
自販機からおつりを取ろうとすると、後ろからそう聞こえた。
「よお、1組のヤンキー。パンツだけは純情な色だね。」
振り向けばそこには、ベンチの背もたれに両腕をかけて大股開きで座る女番長がいた。

「誰がヤンキーか。2組のスケバン。あと無料でパンツ見てんじゃないよ。」
睨みをきかせたあたしの視線を遮断するように掌を前に突き出すと、どっこらしょと言いながら立ちあがった。
「別にスケバンじゃないし。ただ皆がそう呼ぶだけだし。」
それがスケバンの証だっつの。
こいつ自体はそんなに悪い奴じゃないのは知ってる。
ただ喧嘩が強くて、その力を誇示したりしないところにヤンキー共が惚れ込んで、勝手に番長と呼んでいるのだ。

「今日は、なんで一人なん?取り巻きは置いてきた?」
大抵3、4人はいる取り巻きが今日に限っては1人もいない。
スケバンはとても楽しそうに笑った。
「置いてきた。いや、逃げてきた。あんたがここにいたから私はここにいるんだ。」
わざわざ白いパンツ見るために来たのか?

あたしは飲みかけた熱いココアをスケバンに突き出す。
「じゃあせっかくだし、飲んだら?」
ほとんど話したことはないけど、毎日と言っていい程顔を見る機会があったから初めて話が出来て嬉しい。
素直じゃないあたしには火傷するほど熱いココアを先に飲ませるくらいしか、それを表現することが出来ないみたいだけど。

「じゃあせっかくだし、飲む。」
熱い液体、ものともせず。一気に全部飲みほした。って、え?あたしの分……!
複雑な気持ちでスケバンを見つめていると、ビシッとブイサインを決めて
「全部飲んじゃったから、今度返すし。今週末、空いてる?」
照れくさそうに笑った。なんとなく悪い気がしなくて、照れてる顔が可愛くて、思わずあたしまで笑顔になったりして。

週末、こいつが友達になりたいって言ったら、なってあげてもいいなぁ。

END

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