1ページ百合~いじめっ子編~

雨の降る今日、体育館裏の屋根の下、私は縄跳びで手足を縛られている。
「どぉ?今まで散々いじめてきた相手に、手足縛られてる気分は。」
そう、私は退屈しのぎに同じクラスのこいつをいじめていた。
今日だって体育館裏に呼び出して意地悪するつもりだったんだ。

「気分は?じゃないわよアンタねぇ、さっさと縄解きなさいよ!」
顔が気に入らないからとか、キャラがかぶるからという理由でいじめていたわけじゃない。
ただ、いつも暗い顔をして、何を考えているかがよくわからなかった。それだけだ。
「あれ、不思議じゃないの?ただいじめられてるだけだった私が、こうやって形勢逆転できる力があったなんてー、って。」
いつもとは違う、力の溢れた目で、私の顔が見えるように屈むとニッコリと笑った。

「…力で私にかなうのなら、なんで最初からこうしなかったのよ。」
悔しくて顔をそらすと、強引に前を向けさせられる。
「そりゃ、貴女が可愛いからよ。貴女、私が好きでしょう?」
はぁ?いじめられすぎて頭おかしくなったか?
確かにコイツの顔は可愛いけど、私がコイツのことを好きだと?
「早く答えなさい。縄、解かないわよ?」
一人で考える私を呆れ顔で睨みつけて立ち上がった。

「あああ、待って待って。今までいじめて御免!この通り!」
流石に雨の中放置されるのはマズいので、動かない手の代わりに目で謝った。
が、しかし彼女は許さない。
「それは答えになってない。そうね……キスしてくれたら解放してあげる。」
そして彼女は、目も閉じずに私に顔を近づけた。
これは絶対、あとは貴女次第、という目つきだ。
こんな女王様いじめていたなんて私はなんて命知らずなんだろう。

相手が女王様だと思うと、自然と諦めがついて、
「これで…許してよね。」
ついにこの美少女の言いなりになった。
「明日からもいじめるかどうかは、貴女次第。」
彼女が去った後残ったのは、縄の痕と唇の感触と、

…あれ?あと、なんか幸福感だった。

END

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