1ページ百合~姉妹編1~

「おねえちゃん。」
妹はノックもなしにいきなり部屋に入ってきた。
いつもの事なので気にもしないし、私も雑誌を読んだまま返事をする。

「3組の加藤に告られたー。」
中2にもなるとそういう話も出てくるのか。おねえちゃん軽く驚きだ。
「加藤って、男?女?美形?」
内心うちの妹を取られるのは嫌だという気持ちだったが、
せっかく妹が話してくれているのでそんな気持は隠してみる。

「もう、男子に決まってんじゃん。学年で一番モテてる人。」
「…が、なんであんたに?」
学年で一番モテモテで女の子選び放題なお人が、なぜそこでうちの妹?
「知らない。だからどうしたらいいのかおねえちゃんに聞きに来たんじゃん。」
おねえちゃんてほんっと馬鹿ぁ、という目つきで溜息をつく妹。
そうか、おねえちゃん頼りにされてるのか。

だが残念な事に私は男子嫌いで、もちろん告白などはされたこともなく…。
「しかしひとつ言えることがある!妹よ、私はあんたがいれば他に何もいらない。」
雑誌を床に置いて、正面の妹を抱きしめる。
幼い頃から面倒を見てきたんだ。同級生の男子なんかに私の知らない妹の顔なんて見られてたまるか。
中学2年生のガキめ。

「…おねえちゃんて、ほんっと馬鹿ぁ。」
ぐいっと、くっついた私の体を押しのけるとクスクス笑いながら部屋の外へ歩き出す。
「ちょっと、加藤フッてくるわ。」
フフッと笑って、簡単に言った。
「え、ちょ。妹ぉー!あんたそんなあっさりと…!」
という私の声を背中で聞いた妹は、加藤とやらに電話をするためか自室へ戻った。
私はその途中に妹が言ったことを聞き逃さなかった。
『ったく、世話のやけるおねえちゃんね。』

 END

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